小舟からⅡ

小舟から...鉄の斧...緊箍児...そして...小舟からⅡ

(10)イメージ操作

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自分のことを下人と言うのはそういうこと。

別に卑下しているわけじゃないし、謙遜でもない。

歴史と現実を冷静に分析して判断しているだけのこと。

 

父親が聞かせ、見せていたものは...

先祖や家系の話を含めて...虚像...だったことは残念?ながら確定した。

 

先祖や生い立ちなんて全く興味はなかったので、別にこちらから聞くことはなかったんだけれども...

よーく披露していた。

写真や資料まで見せて。

 

子供の頃なので「凄い」というよりも、それらの資料の古さに戦争のニオイがして...気持ち悪い印象の方が強かった。

 

が...成長すると少しずつ気が付くようになる。

他の家庭との交流が増えるので。

比較対象が増えるという言い方も出来る。

 

他人さんなのでそんなにも自慢するはずもないのだが...

自慢されなくても...我が家とレベルが違うことぐらいはわかるようになる。

自分の親が一番の大人だった...はずなのに...

「楽にそれを超えている人々」が次々と現れる。

 

一体何だったんだ。あの「代々優秀で尊敬されてきた一家」という自慢は。

 

母方一族も似たようなもんだった。

偉そうに恰好ばかりつけるくせして...

やっぱり仕事の時間が圧倒的に少ない

のだ。

遊びたいから。

趣味に興じたいから。

 

両家併せて趣味の多いこと。

披露出来ないぐらいの趣味があって、家中道具の山になっていた。

男坊主は「家にとどまらず、遊び歩くのが恰好いい」

と教育されるような環境だった。

 

自分(私)は...

見事なほどに、影響を受けた。

 

社会に出た時は...

あれだけ嫌っていた父親と

ソックリになって登場したというわけ。

 

なんたる皮肉...

 

なんとか表面的体面は姑息に繕ってきたものの...

本当に10年ほど前まで仕事はうまく行かなかった。

当たり前だ。

意識は”趣味”に逃げていたので。

だから...自分も散々に言い訳をし、虚飾に励んだ。

 

つまり...そこまでは...父親を軽蔑しつつ...

実は「父親と変わらない人生」を送っていた...ということだ。

 

こうしてあれやこれやと分析し、その事実を受け入れられるようになってみると...

...もう否定はあり得ない。

 

見られて困ること

知られて困ることがないのなら

大声のアピールなんて必要ない。

ただただ黙って堂々としてりゃいい

だけのこと。

 

”本当のこと”

”実体”を

見られたら困る

知られたら恥ずかしい

から

 

見られる前に

知られる前に

 

イメージ操作しておきたかった

 

ということだ。

 

それでもDNAの威力は侮れなくて...

今尚、知らずのうちに虚勢を張ろうとする瞬間に気が付いてしまったりするので...

そんな時のためなのだ。

「どうせ俺は下人の分際なんだから」

と言い切るのは。

 

そう。

恰好つけずに済むので、

正直にしていられるし、

堂々としていられるし、

何よりも楽なのだ。