小舟からⅡ

小舟から...鉄の斧...緊箍児...そして...小舟からⅡ

軽蔑

 


嫌な環境ではあったけれども....

"苦労話"を考察しているんじゃない。

そもそも苦労でもない。

 


誰しも親は選べないし、家庭も選べない。

「どうして自分の人生がうまく行かないのか?」

の材料としているだけのこと。

だから格別深刻でもない。

 


親父に受けた暴力は毎日ではなかった。

”毎日”は家に居ないので(笑)

ただ....一週間と間が空くこともなかった。

 


親父は「強い男」を演じているつもりのようだったが...

こちらはどんどんと成長もする時代だったので....

いつしか....「猿か赤ん坊なのか」ぐらいには思うようになっていた。

 


恐らくだが....

頭で考えて、言葉で説得が出来ないのだ。

そこまで馬鹿ではないはずなんだが....精神的に”幼稚”であることが問題で、考える前に....カッとなってしまうのだ。

 


殴られながらも反省なんかすることなく、そう考えていた。

 


恨むとか、憎むという感情は幸いにも育たなかったが....

嫌悪感は異常なほどに増殖し、軽蔑した。

 


体力的に勝ることを自覚した思春期の頃。

殴りかかってきた腕をはらって投げ飛ばした。

そして踏みつけた。

 


逆転の日だ。

 


それ以後体罰はなくなった。

「今度殴ってきたらば踏みつけるじゃ済まねーからな」

と言っておいたからか....

 


それ以後の親父は他人の前では相変わらず威厳を発散させようと努力をしているが....

二人っきりともなると異常に低姿勢になっている。

そして...自分の努力話や苦労話や不安話で....自分も一生懸命やっているんだ、考えているんだ、頑張ってはいるんだ....

のような言い訳なのか訴えなのかを知らせてくる。

 


本当にみっともない。

どっちとなっても....我慢とか忍耐とかを知らないらしい....