小舟からⅡ

小舟から...鉄の斧...緊箍児...そして...小舟からⅡ

平尾誠二

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残念ながら若くして亡くなってしまったラグビーの平尾が好きだった。

コアなラグビーファンの方からするなら、「彼のようなスマートなラグビーは現在の世界じゃ通用しない。」

「個人のフィジカルをもっと上げていかないと」というご指摘があるのかもしれないけれど....

でも、あれだけの実績がありながらも、しかも血気盛んで獰猛なスポーツにおいて....

奢らず、威張らず、冷静に努める彼の姿勢は尊敬に値していた。

私もイケ面だったなら、彼の生き様を真似していただろうに.....

 


そんな彼の講演を聞きに行ったことがあった。

壇上に現れた彼は....何故かラグビー界の数々の連勝記録を塗り替えたような威厳が一つも感じられず。

もう現役も退いていたからか、スポーツ選手とは思えないほどスマートで、人前で話すことは苦手なのか?

なんだか異常に照れていた。

 


本人曰く....

ラグビーのような勇ましいスポーツをやっているので、豪放だったり、強引だったり、そういったどちらかと言えば勇敢な性格に思われがちなんですが....実は全然違うんです。」と。

「どちらかと言えば神経質で、失敗をしたくない小心者です。心配性と言ってもいいです。ラグビーも”豪快”というよりも自由に走り回れるところが好きだったというぐらいで....だから”開き直る”とか”当たって砕けろ”のようなことが全く出来なかった方です。」

「ですが....大学でキャプテンをやってきた時に、慶應と当たることになって、当時の慶應の攻撃力は破壊的だったので、『ともかく失点を抑えよう』とディフェンスの練習ばかりしていたんです。」

「それを見た当時の監督の岡さんが....『お前勝とうとしとるんか?』と....」

「だから失点を出来るだけ抑えないとと思って....『いや、お前0点でラグビーの試合で勝てるんか?』と」

「『仮に失点を10点に抑えても、点取らなんだら負けるんやろ?わかってんのか?』と言われまして....」

「続いて『そもそもラグビーは点を取り合うスポーツなんやで、ムコウさんとて点を取りに来るのは普通やろ、ほんで取られたならしゃーないやんか』と」

「えっ、”しゃーない”で済まされるのか?と.....ハっと目が覚めたりする方だったんです。」

「この岡監督というのは私と正反対の思考をする方で、とても勉強になりました。なにしろ入学当時にすぐ『お前のラグビーはオモロない』と言われまして....”オモロい”ラグビーなんてあるんかいな?と思ったぐらいです。」

「が、結果慶應に競り勝つことが出来、岡監督の眼力というか、開き直りというか、覚悟というかそんなものの大切さを知ったわけです」

 


という話だったんだけれども....

この時は「オモロい話やな~」ぐらいだったんだけれども....

今、少しだけ、なんだか共感することが出来てきている。

心配性で小心者で失敗したくない性格の自分でも....

「開き直らないと進めへんやん」という場面はあるんだろうな、と。

 


平尾氏曰く

「絶対負ける」と思っていた試合で勝ったのはこの時が初めてということでした。