小舟からⅡ

小舟から...鉄の斧...緊箍児...そして...小舟からⅡ

濡れ手で粟

 


「趣味人一族」

なんて言えば、たいそうゆとりのある一族に思われるかもしれないが....

仕事を軽んじれば......

別段誰でもなれる(笑)

 

父方の一族も、母方の一族も、それぞれの祖父をトップにまるで競い合っているかのような趣味人一族だった。

それぞれに小商いはしていたが....

他の家人にほぼ任せっきりという見事な趣味中心生活。

街中で焼き物のかまどを持っている家はそうはない(笑)

 

お互い話の多くは趣味の話。

”仕事”だったりすると角の立つことも多いからか?

と思っていたが....気の回し過ぎ。

趣味を「自慢したくてしたくて仕方がない」

だけのことだった。

 

今は自分も半分笑えてしまうんだが....

おそらくシッカリと影響を受けた。

 

人生のパフォーマンスは仕事ではなく、趣味の場で発揮されると信じきっていた。

つまり、趣味こそが生き甲斐。趣味こそがメインステージ。趣味こそが檜舞台.....だ。

 

そりゃあ週末男になるはずだ。

 

恐らく....終戦から長く続いたんだろう、その趣味一族は。

が、バブルの崩壊とともに、見事に落ちぶれた。

 

仕事をしていないので....

這い上がる術も持たなかった。

 

趣味一族の末裔の自分は....

路頭に彷徨った...

というわけ。

 

幸いにもいくつかの出来事で救われて?

今がある。

趣味一族との連絡はほぼ断っている。

いや、断てなかったいとこどもの行方の方が知れなくなっている。

 

そんなもんだと思う。

趣味や遊びで飯が食えるわけがない。

食えてりゃ趣味ではなくプロになっている。

戦後ゼロからのスタートのドサクサ紛れの「濡れ手で粟」はいつかは流れて手元には残らない。